
1)プロローグ ~人が足りない!の大合唱~
最近、クライアント様のトップ層の方々から、「人がたりない!」という嘆きがリアルな実感として増えてきたと感じます。ともに酒を酌み交わす場面では、大概開口一番にトップの口から洩れてくるのがこの言葉です。
小生の実業の中心は、次世代経営者を講義+個別コーチング&チームコーチングを通じて次世代経営陣を育成することを生業としております。(戦略コンサルティングをしてみたり、戦略を推進する人事制度を構築することもありますが・・・)ゆえに、経営幹部以上の階層は順調に育ち、業績も堅調なのですが、小生が基本ノンタッチの若手が足りないという悩みが多くまた深く進行中です。
●経営トップの嘆きの2大ポイント
(1)まず、採用。長野ですと応募者自体が少なく、優秀な人材の取り合いになっていて、せっかく内定を出しても簡単に辞退されてしまう。
(2)転職サイトの影響なのか、少し育ってきた中堅になりつつある若手が辞めてしまう
2)人が足りないの実際
確かに、人が足りないという話はあちこちで聞きます。
小生は今、物流関連のコンサルティングに携わっておりますが、2024年問題で、どのトップも人が足りないとおっしゃります。残業規制が入りますと、どうしてもシフトを組み替えなければならないので、人手が必要になってしまいますから、免許や資格がなくても、体1つでお越しください! 免許や資格は会社がフルサポートします! とアピールするものの、なかなか予定人数には届かない。よって、高齢者や女性の活用でイメージ戦略をとっていたりします。(女性、高齢者が働きやすい。毎日家に帰ってこれて、休みも充実してますというアピール)
クライアントのみならず、行きつけのラーメン屋では、創業以来年中無休で運営していたのに、今年から毎週火曜を定休日にしないとお店が回らなくなってしまったという事実があります。行きつけの居酒屋でもご夫婦2人で回していて、席が空いているにもかかわらず、満席ですと言って入店をお断りしている実態があります。
業種・業態、規模の大小かかわらず、そんな状況を日々目にします。コロナ禍が落ち着いてきて、徐々に景気が回復してきている実感もありますし、実際どこも業績は良いのですが、人手が足らず、キャパオーバーのためにこれ以上仕事を受ける事ができないという状況です。経営的に言えばチャンスロスを起こしています。
3)人が足りないの背景
そこで、小生なりに、その背景を少し掘ってみたいと思います。
結論=就職観の変容
① 結婚から自由恋愛に変わりました!
昔は一度就職したら、定年まで勤めるのが王道であり、途中でやめてしまうのは恥(日本人が一番嫌う概念)と思っている人が多かったと分析しているのですが、雇用形態全体がアメリカ流に押され、成果主義、脱終身雇用、転職してキャリアアップスタイル等、立て続けにグローバルな生産性向上の競争及びワークライフバランスの風土に巻き込まれた感があり、その影響で、自分に合わないもしくは少し興味があるところにスイッチする事がトレンドになってきていると考えます。
② 大物の買い物から100均スタイルへ
上記①と同根だとは思うのですが、自分に合うか、合わないかを見極めるためには、いろいろ試してみなければわからないので、1時期に1点集中ではなく、購買ポイントを多様化し、自分との相性を確認し、納得したところに落ち着くという風土が形成されてきているのではと考えます。
4)人が足りないへの対策5つ
(1) 仕事を見える化⇒これ大前提!DXへの準備運動です
まずは、会社の仕事をカテゴリー分けしましょう。
機械化できるものはどんどん機械化し、本当に人間じゃなければできないことは何かを突き詰めたいです。単純作業や計算式で表現できるものはDX化で、ひらめきや高度判断・決断・ビジネス創造なでは現代では人間様の領域かと考えます。DX化するにしても仕事の流れや、段取り等は見える化しておくことが必須になります。
近い将来AI導入する流れになると思いますが、これにも見える化は必須ですので(まずはパターンを学習させなければなりませんから、その教材が必要になります)、見える化は今からでも遅くないので、徹底的に実施することをお勧めします。
(2)恋愛化・100均化のトレンドに合わせる。マッチングのデータベースの構築
会社の中の多くの仕事、職種にはおそらく向き、不向き、コンピテンシーがあるかと思います。それらを明確に定義すると同時に、社員各人のカルテを作成しておき、その2つのマッチングをシミュレートしておくとが肝要かと思います。この努力が、新卒採用・中途採用の時の合否基準、配属先の決定に役立ち、その後の配属された社員の満足度に直結すると考えます。
(3)マーケティングの応用
数10年前、アメリカで人材獲得競争が全盛だった頃に出版された本があります。『Keepng Good Peope』という本です。良き人材を辞めさせないために・・・という日本語タイトルになるでしょうか。とても秀逸な内容にもかかわらず、残念なことに和訳されなかったので、日本では知っている人が少ないかと思います。
この本の骨子は次の通り。
社員それぞれ求めているものが違う。しかもレベルの高い人材はその要求がユニークなので、会社の特に人事部は社員各人にマーケティング戦略を実行すべしという内容です。
顧客と同様、ニーズ・ウォンツが多様化しているので、各人のニーズ・ウォンツを特定し、その要求を満たす。そうすればCSがあがるのと同様にESも向上する。つまり、One to One Marketingの実践を数十年前に指摘しているわけです。日本で人事部が少しか存在しない(総務部が兼務するスタイル)中小企業では、まだまだハードルが高いかもしれませんが、欠かせない戦略かと考えます。
(4)会社の価値を高め、Switching・Costを高める
これはここ数回連載している内容を参考にいただき、競合に負けない企業価値を高め、転職すると金銭的かつ心理的に損をするということを示すことによって、流出を防ぐ方法です。携帯会社のシェア攻防戦とそっくりです。
(5)今必要な人事制度
これは、少し長くなるので、次回に回したいと思います。
予告編ですが、従来型の抽象的な企画力・判断力等を5段階で評価するような、どこの会社でも汎用性のあるものでは、今の若手を納得することはできないという内容になります。次回、乞うご期待!
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