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津田識義

第31回 今必要な人事制度=自社の価値を高める人事制度


1) 多くの企業で使用している人事制度の問題点


(1)汎用性がありすぎる

 

 汎用性がありすぎるというのは、どのような企業でも活用可能という意味です。未だに多くの企業では職能要件書の名残が残っており、実際に活用されています。時代が大きく変わってきているのに肝心な評価の視点と方法が昭和~平成のままなのです。


 その特徴は、静態的であり、等級別にレベルが設定されているというものの、極めて抽象的な文章表現であって、読み手によっていくらでも意味が変わってきてしまうものが多いです。


例えば

 かように表現が抽象的であるがために、ウチでも使えるのではないかと思い、書籍の内容や知り合いの企業からコピペして活用するという状況になっているのではと推察します。


(2)抽象的(≒上司次第)

 上記(1)の問題とかぶりますが、読み手によっていくらでも意味が変わってきてしまう、どのような解釈も可能になってしまいますから、悪用?する上司が後を絶ちません。

 そうなると人間の心理として閻魔帳的な使い方になり、自分の権限の拠り所となってしまい、本来の評価の目的である能力開発からかけ離れてしまいます


(3)戦略との非連動

 先ほど静態的と表現しました。本来人事制度は企業戦略目標達成に貢献するものでなければ意味がありません。戦略は経営環境変化に応じて適宜見直され、バージョンアップされるものです。

 一方の人事制度の中核を占める評価制度は何十年も変わっていない。これは大問題です。   

 本来であれば、少なくとも大きな戦略変更があれば、人事制度もそれに伴ってリニューアルをかける必要があります。戦略が変われば求める能力も変わるのはどの戦いにおいても共通かと考えます。


(4)個人戦

 「和をもって尊しとなす」17条憲法です。日本人が古より大事にしてきたDNAです。どんな優秀な人財でも個人の力には限界があります。ましてやマネージャー以上になれば多くの異能たちを1つのチームにまとめあげ、戦略課題に対し突入する体制を整える必要があります。ここで大事なのはもちろんチームプレイです。チームの勝利を常に意識した上で、自分は今、何ができるか、どんな貢献が一番役に立つのかを洞察し、実行に移せる感性と行動力です。

 ところが多くの企業の評価基準は、個人にスポットライトを当てています。自分さえできていれば最高得点が出る仕組みになっていると思われます。頭の良い人ほど計算し、加点にならない行動にエネルギーを注ぐことはなくなるでしょう。とても大きな落とし穴かと考えています。



2)若手の悩み

 第30回で、今多くの企業で人手不足が叫ばれている旨を記述しました。追い打ちをかけるように若手の流出がトレンドになっています。転職サイトの責任を追及する経営者もおられますが、その前に自社の評価基準が若手のモチベーションを上げているかを一度確認していただきたいのです。

 自分の働きが、よくわからない抽象的な評価基準で採点され、フィードバックもない、あったとしても点数だけ。次どうしたら良いかサジェスチョンがない。少子化の昨今でも人気のある個別学習教室よりもモチベーションがあがる要素がないですね。これは若手の生の声です。




2)世界のトレンド


 今、世界を代表する企業で起きていることは、脱評価の流れです。静態的かつ抽象的で社員のモチベーションアップにつながらない評価を思い切ってやめてしまい、上司との1対1のコーチングが行われています。そこでは一人一人のツボにはまるフィードバックがされており、具体的に良かった事を褒められ、改善点をこれまた具体的に指摘されるだけではなく、いついつまでにここまで改善しようと約束がされます。当然部下は、自分のことをよく見ているなあと感心し、自分とチームのために次はこうがんばろうというマインドを醸成しやすくなります。

 いきなり評価を廃止できないという企業は、徐々に個人評価のウェイトを下げて、チーム貢献度のウェイトを高めるようにしています。だいたい40~50%くらいでしょうか。




3)こんな内容でいかがでしょうか


 以上を踏まえ、以下のような提案をさせていただきたいと思います。


① 自社にしか活用できない具体的なコンピテンシーベースの評価基準

② 上司のフィードバック力を高めた上で少なくとも四半期に1度くらいのペースでの1対1コーチング(実際やっている企業もありますが、コーチング力が稚拙で、バラつきが激しいのが現実です)

③ 戦略変更にリンクした人事制度のリニューアル(目標管理のバージョンアップで対応可)

④ チーム貢献度の構成比向上(最初は20%ぐらいから様子をみてみましょう)



どれか1つでもかまいませんので、自社に取り入れてみるきっかけになれば幸いです。

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