前回はガンプラの価値を図で表現してみました。併せてハーバード大学院の教授が書かれたバリュースティックの図についても少々紹介させていただき、自社の価値を図に表現し、競合他社との違いを明確にして、価値の領域をいかに広めるかをじっくりと考察することをお勧めしてみました。
今回は、価値を数値で表現することにチャレンジしたいと思います。
ま ずは、価値の公式とは違う分野ですが、多くの方に浸透している稲盛和夫氏の有名な公式をご紹介させていただきます。
この公式の最大のポイントは、足し算ではなく、掛け算であるということだと思います。
どんなに熱意があって行動していて且つ才能に恵まれていたとしても考え方がおかしければ結果がでません。良くニュースのコメントであれだけの才能と緻密な準備ができるのであれば、普通に働けばそこそこ出世するのにねえというものが、考え方がゼロ(場合によってはマイナス)のケースに該当するのだと思います。
人を騙したり、自分の利益だけを考えたり、反社的考え方に立つとだめだという教えです。また、どんなに熱意があっても能力が不足していると、満足のいく結果はついてこないです。また、どんなに才能に恵まれていて、ビジョンも素晴らしものであったとしても、行動せずに部屋に閉じこもって何も世の中に働きかけをしなければ、結果がついてこないでしょう。
多くの方に影響を与え、稲盛氏の人生哲学が反映された素晴らしい公式であると敬服しております。その公式と形が似ている価値の公式をご紹介します。
さて本題の価値の公式:V=(Q・S・C・A)/Pの話をしましょう。
VはValueのVです。価値を表します。
企業の価値を計算するにあたって分子(Q・S・C・A)をPで割ります。
PはPrice(価格)のPです。
100円でも高いと感じることもあれば、10万円でも安いと感じることもあるということを表現しています。
稲盛氏の公式と同じように、分子は掛け算ですので、どれか一つゼロであればV(価値)はゼロになってしまいます。
では、QSCAをそれぞれ解説していきます。
Q:Quality=品質です。
S:Service=サービスです。
C:Cleanliness=清潔さです。
A:Atmosphere=雰囲気です。
以下、小生が自身で体験した忘れられない実話をご紹介していきます。いずれも価値を高める行動、ポリシーではないかと考えます。
●Qualityに関する逸話
mm単位の施工技術。日本企業のエラー基準の厳しさは徹底されています。比較対象として中国の大手ゼネコンさんの話があります。何度もやり直ししても最終的にサッシがはめ込めないほどのバラつきのあるマンションの仕上がりになるそうです。
業種は違いはありますが、こちらは0.1mmのずれでエラー品にしてしまう。使用には何ら影響がないと思われます。実際に小生が合格品と不合格品をじっくり見比べてもわかりませんでした。
ここまでする必要ある?と工場長に聞いたところ、「心意気です」と返答が来ました。
●S:Service=サービスに関する逸話
以前住んでいた街の最寄り駅構内にファミリーマートが入っており、そのスタッフさんにタバコをオーダーする事数回、ある朝小生の顔をみるやいなやスッといつも購入しているタバコが出てきました。何も言う前に買いたい商品が出てくるというような経験は今までした事がなかったため、大変感動しました。それからはほぼ毎日、何も言う前にまぎれもなく小生の好みのタバコが提供されることになりました。そのスタッフさんは高橋さんというパートのスタッフさんでしたが、どのスタッフよりも気が利いていて、優秀で、常連のお客様の好みは大概インプットしていますとおっしゃっておりました。
高橋さんがそのお店にいたために、小生は近くのスーパーで買った方が安いものまでファミマで買うようになりました。
●Cleanliness=清潔感、清潔度に関する逸話
30年程前の話になりますが、新幹線で偶然隣に座った初老の男性から突然「君、いい目をしているね」と言われ、そこから会話が弾み、その後新宿で飲み歩くことになったという不思議な縁がありました。その方はとあるアパレルメーカーの役員さんで、これから百貨店と商談に行くんだとおっしゃいました。
「ところで、僕はどうやって取引先を決めるかわかる?」と聞かれました。
「売場の状態とかスタッフの熱意とかでしょうか?」と小生。
「いあやいや、従業員用トイレを見て決めるんだ。
お客様用トイレがきれいなのは当たり前。従業員用トイレがきれいならば、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)が行き届いていると判断して、うちの大事な商品を扱ってもらう基準に達しているだ」とおっしゃい、さっそうと新幹線から降りていきました。
●A:Atmosphere=雰囲気に関する逸話
テキサス州のシューキーパーの話です。
アメリカのテキサス州ダラスのマリオットホテルに20年以上前に宿泊した時の話です。
展示会で歩き回ったので、靴が少しよごれてきたかなあ。と思っておりました。そのホテルの広大なロビー中央に玉座が高台に設置してあり、そこで靴を磨くという、なんだか靴磨きに命がけのホテルだなあと思っておりました。
さすがに、そんな目立つところで靴磨きをしてもらうことに耐えられるメンタリティを持ち合わせていないので、自分で部屋に戻って磨こうかと思ったところ、部屋に籠がおいてあり、メッセージが紙に書かれておりました。
「この籠に靴をいれていただき、廊下に出しておいていただき、内線×××までご連絡いただけますと、3時間以内に専門シューキーパーがピカピカに磨き上げてお届けします。」
電話をすると、すぐに客室係がとりに伺いますとのこと。チップを渡そうと足音がしてきたので、ドアを開けると、なんと2人が競歩状態(おそらく支配人から廊下走るべからずと教育されているのか・・・)で我先にと競って靴を奪い?にきました。
その熱意に敬服し、2人にチップを渡しました。
このホテルはお客様の靴をとてもとても大切にするんだという姿勢・ポリシーを深く理解することができました。
小生の実際経験したQSCAに関する話は以上です。
この公式に当てはまる業種は、小売り、ホテル、レストラン等の業種かと思います。
他の業種の方々は恐縮ですが少しアレンジしていただいて、自社のV(価値)が昨年より上がっているのか下がっているのか、競合に勝っているのかを一度測定されることを強く推奨させていただきます。
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