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第44回 企業価値向上に結び付く社員の評価基準の作り方

津田識義

1)ビジネスモデルキャンパス~VPとCSがポイント~


通常、ビジョンコーチの経営人財育成プロセスにおいては、ビジネスモデルキャンパスを創りながら次世代経営者の視座を高めていきます。我々はいったい顧客に何を提供しているのか。そもそも我々の顧客とはどんな人なのかという経営の原点に立ち返ります。

 そして、われわれが提供したい価値の差別化ポイントはどこにあるのかというブランド戦略にも立ち入って考えることが求められます。

 例えばこんなことがありました。

 テレビコンテンツの制作会社にて、「当社は品質の高いテレビ番組を創ることが、最大のVP(バリュー・プロポジション)である!」経営陣を筆頭にほとんどの社員がそう思っており、最高の品質にこだわり続けて、徹夜続きの日々でした。おそらく業界では断トツの長時間労働です。ただし、根幹は品質へのこだわりですから、だれも厭々やっている者はおらず、それは当然の事ととらえるカルチャーになっていました。

 そして転機が訪れます。創業以来始めての顧客インタビューの時でした。社員一同茫然とした瞬間です。「品質はそこそこでいいんだ。我々が御社と取引を長年続けている理由は、実は【安心感】にあるんです。安心感といっても2つの安心が大事で、納期と番組コンセプトの一致。この2つの安心感が得られないと、我々はどんなに価格が安く提示されても取引はしません。」

 このインタビュー後設計した、我々の本来提供するべきバリューを中心に組み立てなおしたビジネスモデルを下記に例示しておきます。



2)ビジネスモデルキャンパスと人財評価基準


 メインターゲットであるCSに提供するVPを的確に設定できたら(くどいようですが、これをとらえ違えているケースが多くあります・・)、あとはそれを実現する主な活動項目をKA欄に記入します。すると今までの評価基準では見えなかった、価値をもたらす行動が見えてきます。

 

 上記の制作会社の例で言うと、顧客の経営戦略を理解すること及びスケジュール管理が最も大事なことだったにもかかわらず、明示されていなかった(気付かなかった)ことにより、だれも行動していなかったということに気付かされます。

 仮に行動している人物がいたとしても、今までは全く評価の対象にならなかった事項です。

 つまり、この会社がクライアントに提供していた価値(バリュー)≒ブランド価値は、社員の無償の行動によって今まで支えられていたことになります。これらVPを下支えする重要なKAを見える化し、評価基準に落とし込んでいくことを推奨します。

 なぜならば、最も真似されにくい価値≒ブランド価値を提供する源泉は人財の考え方、ものの捉え方、行動にあるからです。


 

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