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津田識義

第45回 ウクライナ/ゲームチェンジのインパクト

●ウクライナのクルスク奇襲攻撃で感じたこと


 ウクライナがロシア領西部クルスクに侵攻してから1週間が経ちました。日々数キロの進軍が進んでいるようです。この奇襲の成功のカギを握るのがドローンです。

 最前線の画像を見ますと、戦車や装甲車のハッチにピンポイントで突っ込んでいく自爆型ドローンが車両を破壊していく様子が見て取れます。もしくはロシア兵が潜む塹壕の入り口を発見し、そこに突っ込んでいくドローンの様子が見て取れます。直径1m未満の穴によくも正確に突入できるなあと感心します。しかも赤外線や温度感知機能付きですから、昔のように林に隠れても全く意味がなく、上空からいとも簡単に発見され、ロックオンされてしまいます。

 これでは、ベトナム戦争で相当の成果を出したゲリラ戦法も無効化されてしまいます。これは今後の戦い方に相当な変化をもたらすだろうなと感じざるを得ません。


 

●コスパ:1台7万円対戦車・装甲車両・砲台・塹壕


 ドローン1台の製作コストは約7万円です。一方でそのドローンで破壊される戦車の製作コストは15億円程度だそうです。

 ドローンも機体単体の7万だけではなく、指令室のコストとその拠点とデバイスを繋ぐ通信コスト、搭載する弾薬のコストがかかってきます。が、人件費がかかりません。

 すべては指令室でコントロールするので、デバイスそのものに人員は必要ありません。一方戦車の場合は現時点の技術では3~4名必要になります。次いで装甲車両や多段砲等の砲台、歩兵が隠れる塹壕等戦車ほどではないですが、ドローンのコスパを相当下回ります。


 

●第2次世界大戦で艦船から航空機×長距離ミサイルへ


 そもそも戦車が登場したのは第1次世界大戦で、今から100年以上前の武器です。とはいえ地上戦では主力の装備であり、陸軍の花形でもあります。第2次世界大戦までは洋上では巨大戦艦が海軍の主力であったものが、航空戦に主力が移り、空母×戦闘機が主力になりました。現代のイージス艦1隻に2500億円かかるそうです。

 F16戦闘機は約80億円。F16戦闘機1台に沈められる艦船をクリミア沖の画像で見ました。当然戦闘機のコスパが相当高いわけです。

 そう考えると、武器の歴史は人件費も含めたコスパ競争の歴史と言ってもよいかもしれません。

 


●ドローン×AI


 今後の戦場の武器開発のトレンドを予測すると、歩兵や戦車がコスパ的に埋没し、スピードと弾薬の強力さで航空機の優位性は担保され、埋没する歩兵と戦車の代りに長・中・短距離ロケット砲×ドローンが主役に躍り出る可能性が高いかと考えます。

 


●ドローンは組織にも影響する


 さて、ドローンが戦場の花形になった場合、その所属はどうなるのでしょうか?

 空を飛ぶから空軍? 地上の戦車と歩兵を駆逐するから陸軍? はたまた艦船も撃墜するので、海軍でしょうか? それとも陸・空・海と様々なリソースを分断するよりも、組織を横断する独立ドローン部隊が最もおさまりが良いのでしょうか?

 


●対抗策


 今後強力なドローン部隊と対峙する敵国は何を考えるでしょうか?

 おそらくドローンを無効化する事を狙ってくるでしょう。無線をシャットダウンするもしくは、AI搭載式のものであればプログラムを書き換えて略奪する。まさにハッキング能力の向上が要になるのではないかと考えます。


 

●ビジネスツールは戦争が起源


 ネット、ドローン、原子力等々現代人がその恩恵を享受しているものの大半は戦争が起源です。そもそも戦略や組織論も戦争がベースです。

 そう考えると、これからのビジネスも相当の変化を覚悟しなければなりません。AIやRPA,ドローンがビジネス現場に入ってきますので、ゲームチェンジが過去ないペースでおこりやすい環境になります。

 敗戦国のパターンから学ぶと、過去買った戦略、手法、デバイスに固執して、予算取りから失敗しています。この教訓をビジネスに活かさない手はないと思うのです。経営者は今後ますます変化に敏感であり、その対抗策をバージョンアップする必要がありそうです

 


●その他雑感


 武器の平和利用。これが何よりです。

 ドローンを熊の駆除に上手に使えないでしょうか。


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