5F(ファイブフォース)分析
今回は、前回のPEST分析に続き、5Forces分析について解説をしていきます。業界の収益性を決める5つの競争要因から業界の構造分析をおこなう手法です。

●5F(ファイブフォース)分析
(1)業界内競争者
業界内での競争は、競合他社との直接的な競争を表します。どのような業界であっても、競合企業が存在することにより収益性は下がります。企業としては独自性の高い製品やサービスを生み出し、他社との差別化を図ろうとしますが、競争力があり差別点が明確な製品・サービスを考案するのは大変難しいです。
メーカーであれば特許をとる努力が不可欠ですし、特許で守られない業界では、常に提供メニュー等のリニューアルや秘密のレシピが必要になるからです。競合企業が増えれば増えるほど当然競争は激しくなります。また、業界そのものの規模が小さい、あるいは低成長状態であれば、製品・サービスの供給側が飽和状態になってしまい、収益性が落ちてしまいます。
ゆえに、自社も含めた競合各社の数と規模、知名度、資金力等の分析が必要なのですが、実務的には業界シェアグラフが作成できればまずは大丈夫かと思います。さらにその業界全体の規模や成長率(過去のトレンド及び将来予測)も知りたいところです。
(2)新規参入者
新規に当該業界に参入がしやすいかどうかは、その業界によって大きく異なります。
異業種からの参入障壁が低ければ、今後も多くの参入者が現れることによって価格競争が激化し、そのたびに収益性が下がり続けることが想定できます。
逆に参入障壁が高ければ一定以上の収益性を確保できる魅力的な業界と判断することができます。
この新規参入者での分析ポイントは、まず市場の規模、そして参入者の技術レベル・ブランド力・特許で守られる可能性等で、それが自社の活動にどれほどの影響を与えられるかをシミュレーションする必要があります。
(3)代替品
代替品の存在とは、自社の製品・サービスに代わる価値を持つものについてですが、同業他社の競合製品とは異なります。
ポイントは視野を少し広くとっていただき、例えば書籍や雑誌に対する電子書籍、家庭用ゲーム機に対するスマホゲームアプリ、テレビに対するYouTube等業界の外からやってくる製品・サービスの脅威を指します。
ここでは、代替品と自社製品との質的な違いやコストの差のほか、代替品へ乗り換える際の手間やコストなどを分析します。自社の製品・サービスよりも低価格で高品質でより価値の高い代替品が現れれば、それは自社だけでなく業界全体の収益をおびやかす大きな脅威となります。
(4)買い手(顧客の交渉力)
買い手の交渉力とは、消費者や顧客といった買い手と、自社との間にある力関係を指します。競合が多く価格競争が激しくなれば「買い手市場」となり、自社のシェア、収益性は落ちていきます。
ここでは、市場規模や競合他社の状況とともに、自社製品の値下げ幅も含めた価格設定などがポイントとなります。売り手と買い手の力関係は適切か、無理な値引き競争に陥っていないかなどを検証します。
(5)売り手(サプライヤーの交渉力)
売り手の交渉力とは、売り手(サプライヤー)と自社との力関係を示します。メーカーであれば原材料のサプライヤー、小売業であれば卸会社との関係から収益性を測定する部分です。これは、上述の自社と買い手との関係と同様に、同品質・同価格のものを扱う売り手が多ければ自社の収益力は高まりますが、逆になれば売り手が力を持ちます。
●5F分析の活用方法
それぞれ5つの脅威について分析するのがこのフレームの特徴ですが、個別の分析だけではなく、このフレームの横軸・縦軸に沿って分析することで、業界内での収益の上げやすさを検証したり、さらにその業界内で自社がどれほどの収益を手にできるかをチェックしたりすることも可能です。
●戦略ストーリーを導き出す
【STEP1】
選択した業界において、5つの競争要因は今後どのような状況になるかを議論し、各評価とその理由を記載してみましょう。
【STEP2】分析結果の結論として、この業界の魅力度を評価(○・△・×)し、今後の業界の課題を整理してみましょう。

◆次回は、VUCAの時代に欠かせない、コンティンジェンシープランについて話を展開します。
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