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津田識義

第7回 現状分析について

●原因は様々


 1つのエラーに対する原因は様々です。多くの企業で「5times Why=なぜなぜ分析」を実施していますが、同じようなエラーが繰り返しおこなわれてしまうことが多々あります。なぜ、テキスト通りに5回もしくはそれ以上の原因を追及しているのにエラーが起きるのでしょうか。


 決して「5times Why」という思考のツールを否定しているわけではなく、正しく使えていない人、ミーティング、役員会に多く遭遇していたからです。正しく使えていれば、おそらく5回以内に正しい対処方法が見つかりミスは激減するはずです。ゆえに、ツールの批判をする前に正しく使う方法をマスターしたいところです。



●「5times Why」の限界サンプル

 例えばこんなことが病院内で起きたとしましょう。

 301号室の8人収容の一般病棟に胃潰瘍で入院していた鈴木さんという患者がいたとします。夜中にトイレに置き、寝ぼけ眼で自分のベッドに戻ってきて、また熟睡しました。翌朝なんだか体調が悪く、ナースコールをしたところ看護師さんが青ざめてしまいました。

 看護師さんは田中用の濃度・成分の違う点滴を鈴木さんに注入してしまったのです。昨夜、鈴木さんがトイレ帰りに寝ぼけて、ステージ1の胃癌患者の田中さんのベッドにもぐりこんできたために、投薬で意識朦朧としていた田中さんは隣の鈴木さんのベッドに緊急避難し、二人とも朝までベッド交換した形で熟睡していました。

 運悪く布団からから出ていた頭は白髪交じりで区別がつかなかったため、看護師さんは田中さんのベッドに寝ていた鈴木さんをてっきり田中さんと思い込んで濃度の高い全く別の点滴を注入してしまったという顛末です。

●この場合のやりがちなケース

 多くの組織ではこの場合、ヒューマンエラーに視点が集中し、この看護師さんの確認不足であると結論づけると思います。















5段階まで考えたのだから、対策を講じて看護師を増員しましょう!そしてチェックをダブルチェック体制にしましょう!



●この場合の真因は

 上記の事例では、実は第2、第3段階の追及で十分で、その背景に以下の真因があるとします。










●原因と真因の違い

辞書によると

【原因】その結果を引き起こしたこと、また、その結果につながる行動などのもと

【真因】その結果になった本当の理由


 ますますわかりにくい気がしまうので、真因にちょい足しして説明しますと、その結果になった本当の理由を組織的、システム的に防御できていなかった事と考えます。


 真因を特定せず、個人的なヒューマンエラーに原因を帰属させてしまう組織が非常に多く、それを繰り返すとチーム・組織としてレベルアップするチャンスを逃してしまいます。

 

 

 以上をふまえて一度社内の過去の原因対策を見直してみると良いかと思います。



 ◆次回以降は、数回にわたり戦略設定に話題を移していきたいと思います。



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