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津田識義

第2回 Afterコロナ時代への準備

1)今後10年間の変化の本流

 数年前よりIT業界が先導し行政各機関の後押しもあり、AI、RPA、DX等々、私も含めて昭和世代が目にすると眩暈がしそうな言葉が目に付くようになりました。そしてコロナ禍の中で否応なしにリモートワークにシフトし、その環境変化を通し、今まで馴染みのなかった世界観を少し先行で経験された社員が多いのではないかと思います。

 この動きは一過性のブームで終わるのでしょうか。コロナウィルスが人類の脅威でなくなった時、昭和の時代とかわらない集合型オフィスに通勤する毎日が戻ってくるのでしょうか。

 私の見立ては“否“です。この“否定“の意味は、単なる技術進化の延長線上の変化ではないという意味が含まれています。



2)本質は人間回帰

 同じ価値を提供する企業があるならば、当然コストを安く提供できる企業が競争優位に立ちますから、おそらく今後は加速度的にIT・自動化・機械化への投資は進むものと考えています。ですから、今我々が取り組みを始めたリモートワークも生産性が向上するならば、標準の働き方になるでしょう。

 ただし、ここで経営者が最も留意しなければならないことは、同じ価値を提供するならば、という前提条件です。IT・自動化・機械化は基本的に省力化であり、損益計算書で表現するならば、コスト削減≒スピードアップという範囲にとどまります。当然といえば当然ですが、売上を向上させるにはダイレクトな投資行動ではないわけです。(※インダイレクト=同じ価値であり、価格が廉価であれば、売上げは上がる可能性はある)

 ターゲットは、自社の提供価値を向上させるダイレクトな行動です。これが恐らく競争優位に立つための本質であろうと考えます。



3)人間がやるべきことと機械がやること

 少し雑かもしれませんが、わかりやすく分類しますと、今後人間が担う領域は、企画・判断・デザイン等の定型化されずに、恐らくあと数十年ではAIが追い付けない領域かと推察します。AIはあくまで過去の膨大なビッグデータを学習し、このような場合にはこのような傾向にあるという事を正確に示唆するものですから、人様ができることはこの領域ではないかと思うわけです。

 一方機械やシステムは定型化され、数式化可能なものに特化させると最も効率があがります。何分、ヒューマンエラーはなく、メンテナンスさえしっかりしておけば24時間365日稼働できるからです。この2側面を両立できる企業が最も競争優位をもつものと考えられます。



4)失敗から学ぶこと。これをやったらおしまいよ!

 今から10数年前に、有名なビジネス雑誌に特集された華々しい企業がありました。今思えば、AI導入の先駆者だったと思います。私はその企業の人事部長にスカウトされ、一度訪問することになりました。新宿の高層ビルの上層階に降り立つと、その当時ペッパー君の影がなかった時代ですが、似たような受付ロボットが応対してくれました。その後、整然と配列された机がずらっと並び、スタッフたちは黙々とモニターとにらめっこして設計図を描いていました。


●案内してくれたスタッフ:「津田さん、この会社で一番偉い人は誰だと思いますか?」

●津田:「まだお会いしていませんが、当然社長では?」

●スタッフ:「いいえファラオというシステムです。ファラオは全社員の日々のアウトプット、稼働時間、トイレに行った時間まで管理しています」と言ってデータを見せてくれました。


 私の脳裏に描かれたのは、昔のチャップリンの映画です。『モダンタイムス』。工業の非人間性と、個人の幸福を求めてそれと戦う人間の物語です。映画の公開から70年以上もたっているのに、基本何も変わっていないのだなあと感じ、翌日には私は断りの電話をしました。その企業は数年後にはなくなってしまいました。


 

5)あくまで人間が主人公

 多くの企業を30年にわたりコンサルティングしてまいりましたが、いまだにチャップリンが映画で描いた世界観を押し通そうとする会社が多くあります。そのような企業は残念ながら、今回の革命を前回の革命(産業革命)と同様な位置づけでとらえており、変化の本質に気づいていないようです。

 ファラオが管理していた企業の最大の問題点は何かというと、“性悪説“に立脚していたことです。システムが目を光らせていないと社員は手を抜き、トイレで長時間さぼり、仕事をしない=ノルマをこなさないという、チャップリンが戦った世界観そのものです。

 この価値観では、当然これからの時代、競争には勝てません。なぜならば、前述の通り今後人間様に求められるのは、企画・判断・デザイン等の創造分野だからです。それらの価値を最大化するには“性善説“に立脚する必要があります。



5)性善説=人間が本当にもとめるものを理解する

 そのためには、社員一人一人が「何をしたいか」を理解しておく必要があります。そのうえで、そのやりたいことが最も効果的に遂行できる環境を整えてあげる必要があります。機会には油をさし、人には心を燃やす環境を整えてあげることです。

 性善説で組織を運営するには、以下の問いがオフィスを駆け回っているのが理想です。


 ・あなたは、何をしたいですか?

 ・将来どうなっていたいですか?

 ・あなたは何を創りたいですか?

 ・あなたの世界観を教えてください。



本日の結論

①人様は、鞭(性悪説)がなくても以下の原則に従えば、ほっておいても心を燃やし、成し遂げようとするでしょう。

②以下の原則に対し、明確な答えがある人を募るもしくは徹底的に育成すれば良いのではと考えます。


   ◆次回は、組織デザインの話、特に適所適材(×適材適所)を展開します。




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