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津田識義

第16回 人財育成その2 ~視座を高める~ ジョブ・クラフティング

●今回は前回の3視の話を踏まえ、視座の話をしたいと思います

 前回の内容を復習しますと、「視座とは、物事を見る自身の立ち位置のことです。打ち上げ花火を上からみるのか、下から見るのか、真横から見るのかによって、見える景色がまるっきり変わってきます。経営上では、株主側でみるのか、それとも社員側から自社の現状を見るのかが問われます。全社では理に偏ることになり、後者では情に偏ることになります。自身の特性を良く見極め、自身が情に脆いタイプであると判断するならば、より理の世界に軸足を移し、理に偏っている(要は薄情)と判断するのであれば、情の世界に軸足を移してみるという事が求められます」と視座を定義しました。

 

 視座に関してのポイントは、自身の基本のスタンスをもちつつ、そこからエレベーターに乗っているかのようにケースバイケースでアップダウンできるかということです。


 様々な立場に立ってみて、あえて普段と違う結論を出してみる脳内トレーニングをお勧めします。

 例えば、住居に関して賃貸派か持ち家派か。

 基本自身がホテル住まいのホリエモンと同様のスタンスを持っていて、ライフスタイルの変化への対応や災害へのリスクを重視し、賃貸派をとっているとしたとしても、あえて持ち家のメリットにスポットライトを当てて、一戸建てを買ってみようかなという気になってみるまで徹底的に持ち家派になりきってみる(あくまで、なりきってみるだけです)。

 水害時の垂直避難のしやすさ、老後賃貸契約を断られることへのリスク回避、最終的に購入価格よりも地価が下がっても自分の資産になる=家賃はもったいない、なんといっても自宅で死を迎えられる等々。


 あえて両極で比較したうえで、一度冷静に、自分はどっちを選ぶかを決断すれば良いだけです。

 何はともあれ、現代は一側面だけを見て結論付けるには危険なダイバーシティという経営環境になってきておりますので、普段からこのような脳内トレーニングはやっておくことは大事になるかと思います。



●次のポイントは視座を高めるにはどうしたら良いかというテーマです

 今まで社員側に立っていた方が経営視点を持たねばならないという方々を対象にする場合が大半ですので、小生はジョブ・クラフティングの話をします。


 ジョブ・クラフティングとは、米イェール大学経営大学院のエイミー・レズネスキー教授とミシガン大学のジェーン・E・ダットン名誉教授が、2001年に提唱した理論で、「組織や上司が決めたタスク・ルールに忠実に従う」という従来の労働観に異を唱え、従業者の主体性を重視することで、仕事を生き生きとしたやりがいのあるものに変えていくことを目指しています。

 「上司の指示でやらされている」「会社の意向でやらされている」と思うと、仕事はただの退屈な作業と化してしまいます。モチベーションが下がり、生産性や成果物の質にも悪影響が及びかねません。仕事に「やらされ感」を感じると、自分が退屈になるだけでなく、パフォーマンスが落ちてビジネスパーソンとしての評価を下げられてしまう可能性が高くなります。


●3人のレンガ職人

 セミナーで良く上記のジョブ・クラフティングをわかりやすくお伝えするために、3人のレンガ職人の浜氏をします。ある少年がそれぞれ別の日に3人のレンガ職人に同じ質問をしていきます。「おじさん、何やってるの?」


■レンガ職人A

「見ればわかるだろう、レンガを積んでいるんだよ。生きていくために毎日毎日暑い中、レンガを積んでいるんだ。あーもう疲れた。毎日毎日同じことに繰り返し。暑いしダルいし、あー明日嵐が来て休みにならないかなあ」


■レンガ職人B

「見ればわかるだろう。レンガを積んでいるんだ。オジサンには幼い子供が3人いて、ミルク代を稼ぐために雨が降ろうと槍が降ろうと手を止めるわけにはいかない。親方からも毎日1000個以上積むノルマを決められているかなね。作業の邪魔だ!気が散るからむこうへ行ってくれ!」


■レンガ職人C

「見ればわかるだろう。レンガを積んでいるんだ。村の人が安らぎと幸せを祈りにくる聖堂をつくっているんだ。村のシンボルだ。だから100年、200年で崩れることがないよう、工夫しながら1つ1つ心を籠めて、工夫をしているんだ」


 このように、見た目は3人ともレンガを積んでいるわけですが、視座が高くなれば、モチベーションが高まり、さらに創意・工夫の余地が生まれてきます。



●自社のバリューとは何か?

 経営陣に入ったもしくは目指すのであれば、自身の視座を高めるのみならず、全社員の視座を高めることも必要になってきます。我が社は何にために存在するのか(レーゾン・デートル)。我が社の価値(バリュー)はどこにあるのかを分かりやすく、かつ常日頃社内全体にコミュニケートしていく必要があります



 ◆次回は3視の2つ目である視野の話を展開したいと思います。

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